top of page
< Back

しあわせな家族ばかりじゃない! 家族に悩みを抱える人が直面する〝見送りの時〟を『絶縁家族 終焉のとき ―試される「家族」の絆』で考える

6

橘さつき 様

【出版をご一緒した著者の声:橘さつき様】
しあわせな家族ばかりじゃない! 家族に悩みを抱える人が直面する〝見送りの時〟を『絶縁家族 終焉のとき ―試される「家族」の絆』で考える

出版をご一緒した著者の声として、『絶縁家族 終焉のとき ―試される「家族」の絆』の著者、橘さつきさんをご紹介します。橘さんは〝家族と葬送〟をテーマに執筆活動を続けているフリーライター。日本葬送文化学会常任理事を務め、葬送文化を学んでいます。


執筆テーマを選んだきっかけは?


家族愛を絶対視する社会の中で抱いていた違和感があった


Q: 『絶縁家族 終焉のとき ―試される「家族」の絆』は、どのような本ですか?

橘:変わりゆく時代の中で、今の家族の形式をリアルに描いた本です。家族というと、コマーシャルなどでは〝しあわせそうに食事をしている4人家族〟のような典型的なイメージがありますが、そんな家族は実際にはどのぐらいいるのかと思いますよね。この本では、色々な課題を抱えているご家族を見つめ、しかも葬送や葬儀という終焉の場面を切り口にしたノンフィクションです。


Q:家族のあり方は、古今東西の普遍的なテーマですね。

橘:はい。今に始まったことではなく、昔からあった問題だと思います。ただ、やはり社会の価値観として、家を大事にした時代から個人を大事にする時代に変わってきたことで、特に目立ってきた問題です。


Q:こうしたテーマを選んだきっかけは何ですか? 

橘:家族間殺人が頻発している世の中です。絶縁している家族は想像以上にたくさんあるのに、どうしても世間は、家族は大切なものとして美化したがります。

そんな中で、葬送業者の方たちが掲げる「感謝で送るお葬式」「大切な家族のお見送り」といった言葉に、実際の家族感情とはちょっと違うのかもしれないという違和感を持っていました。家族愛を絶対視する社会の中では語られることがない、もっと複雑な家族の別れや苦しみがある。それを知ってもらいたいし、家族のせいで苦しんできた人たちに対して何かの救いになる本を書きたいと思いました。


執筆に至るまで、どのような人生を歩んできたか?


母にとっては「大切な長男を傷つける存在」であった私


Q:橘さんご自身が、当事者として深くテーマに対峙している理由をお聞かせください。 

橘:執筆までの経緯には、母と確執があった自分の経験も大きく関わっているからです。母が長男として大切にしている兄には子どもがいませんが、私は3人の子どもたちを生みました。そのため母は、私の存在が兄を傷つけていると言って私を責め続けました。そして父が26年前に亡くなった時には、供養の場に私が出ることを禁じたのです。一周忌の法要の時にも、ひと言も口をきいてもらえませんでした。

それ以来、私はずっと1人で父の供養をしてきましたが、どうして親が、家族が、こんなことをするのだろうと思い続けてきました。世の中の他の家族にもこんなケースがあるのかと気になって、調べて書いてみたくなりました。


Q:葬儀や葬送を切り口にしているのは、そういう経験があったからなんですね。

橘:それもそうですし、私が今、日本葬送文化学会に所属しているからでもあります。日本葬送文化学会は、大学の研究者や葬祭事業者、宗教者、ジャーナリストが集って、葬送文化について学ぶ研究団体です。そこで葬儀会社の方たちから、「最近は死者の尊厳がなく、葬儀場でけんかをはじめる遺族がいる」とか「どんどん葬儀が簡素化されていってしまう」という話をよくうかがっています。

でも私から見ると、きっとその背景には深い闇があるだろうと思うんです。葬儀場でけんかするのは、ただの相続争いに見えて、実はその前にもっと積み重なったものがあるんじゃないかと。葬儀が簡素化されるには、それなりに理由があるのではないかと。そういう部分を書きたい気持ちがあって、ずっと取材を続けてきました。



出版への道のりは?


企画書の見直しや出版社の紹介がありがたかった


Q:Jディスカヴァーにご相談いただいて、いかがでしたか?

橘:Jディスカヴァーの門を叩いて、城村さんと出会うことで自分自身の持っているものや伝えたいものを引き出していただけました。そして、それを出版社につなげてくださいました。自分一人で交渉していたら、とても出版社とのご縁はなかったです。

こちらにご相談していなかったら、今日の私はいなかったと思います。確か、1日セミナーの締め切りの前日に、慌てて申し込みをしました。


Q:一番良かった点はどんなところでしょうか?

橘:出版社につなげていただくにはとにかく企画書が大事なのですが、何回も何回も直していただきました。最初の頃を思えば、こんなにも違うものかと驚くほど企画書がブラッシュアップされました。自分が書きたいことではなくて、読者にどういうふうに伝えるか。また、出版社の方にも理解してもらえる企画書の書き方など、一つひとつ教えていただいたおかげで出版にたどり着けました。

著名人の本ならともかく、無名の著者がノンフィクションや一般の無名の人について書くのは、本当に難しいことですよね。だから半ば諦めていて、実用書というかたちで書こうかとも思っていました。でも、初めての著書を自分の一番書きたいことで書けたことは、すごくしあわせなことです。


出版社とのつながりも昔お世話になった方とのつながりも、出版のおかげ


Q:出版社に企画書が採用されてからはスムーズでしたか?

橘:はい、びっくりするほど! 最初の打ち合わせの時に、いくつかエピソードのサンプルを書いてくるように言われて、サンプル原稿を提出しました。たいていは本の中のエピソードって短いものが多いですよね。でも私は、それでは何か物足りないと感じていました。いろんな家族の問題を描くには、短いと人間が描けないと思ったので、試しに長いエピソードを書いてみたら「おもしろい!」と言われまして。

それ以降もどんどん送ってほしいと言われて、自由に書かせていただきました。おかげでいつの間にかノンフィクション中心の本が書けましたし、家族に悩んでいる人たちがどんなお見送りをすればいいかといった実用書的な部分も描けました。出版社とやり取りするうちに、結局は私がもっとも望んだかたちの本になっていたという、マジックのような話です。


Q:出版社との良いつながりができましたね。

橘:企画書を認めていただけたことが大きいんです。つないでくださった城村と版元さんと私とで、三位一体の信頼関係ができました。いい出会いに感謝しています。

出版までには、他にもいろいろ出会いがくれた感動を味わいました。まず私がライターとして駆け出しの頃に、母のことを書いた原稿を読んでくださったジャーナリストの大先輩であるタキノさんから「このことをぜひ本に書きなさい」と背中を押してくださっていました。また『毒親介護』を書かれた作家の石川結貴さん。石川さんのところで勉強させていただいた時期があったので、この本を献本したらとても喜んでくださって、詳しく丁寧な感想もいただきました。昔お世話になった方との縁も、本がまたつなげてくれました。


出版後の反響と変化


読者の方からの反響だけでなく、葬儀関係者からも反響があった


Q:出版後に、反響は届いていますか?

橘:はい。出版社さんの方にたくさんはがきが届いています。

私は、親を敬うべきだという昔の教育を受けた方からは、批判されてしまうかもしれないと思いながら本を書いたんです。でも80代の方も読んでくださって、「よくぞ書いてくれました! 昔はこんなことは言えなかった」と感想をお聞かせくださいました。また、「わが子や孫とこれからどういうふうに接していこうか」と思いながら、この本をくり返して読んでいるという方もいらして、そんな声を聞くと涙が出てきちゃいますね。


Q:葬儀関係の方からも反響があったようですね。

橘:本にも書きましたが、葬儀社の方たちは、家族で悩みがあると空気で察したとしても、立ち入ることは遠慮されます。だから、この本で初めて「わかっているつもりだったけれど、家族の悩みってこんなに苦しいんだ、背景にはいろんな事情があるんだ」と知ってくださったんです。そして、自分たちはそれをしっかり受け止めていかなきゃいけないと。「社員にも読ませます」と言ってくださった社長さんがいました。


出版をきっかけに自分の軸となる〝ライターとしての顔〟ができた


Q:ご自身に変化はありましたか?

橘:Rainbow Town FMに出演させていただいたり、文春オンラインや毎日新聞のコラムに掲載されたりして、変化を感じています。シンガーソングライターのEPOさんにも、本をご紹介いただきました。

私にとって初めての著書になるわけですが、1冊の本が世の中に出ると、こんなに変わるのかと驚いています。これまでもライターとして自由に好きなことだけを書いてきましたが、本を1冊出したことで、自分の軸になる〝ライターとしての顔〟ができた気がします。


出版を考えている人たちへ


たくさんの人の力を借りて、出版の夢を叶えよう


Q:出版を考えている人たちにメッセージをお願いします。

橘:夢をあきらめずに叶えてください。一人の力では無理だと思います。私の場合は、色々な方それぞれの力を借りてこの本を出版しました。城村さんも出版のきっかけをつくってくださいましたし、出版社でも編集の担当者、校正、校閲のみなさん、本当にプロだなと感動することばかりでした。SOSを出して人の力や助けを求めることを遠慮しないで、夢をあきらめずに本を出してくださいね。

bottom of page